『肘神神社』とは
2018年創建の「肘神様」を祀る神社

『肘神神社』とは岐阜県高山市にある、2018年というかなり新しい時代に創建された神社。祭神はその名の通り、肘の神様が祀られている。概要だけ見れば一風変わってはいるが、日本の宗教観を鑑みると、そういう神社もあるかと思う人もいるだろう。しかしこの神社最大のポイントは、その由緒を創り建てたのが、あるお笑いコンビであるということだ。




漫才のネタから生まれた珍神社
浅井企画所属の、ちゅうえい氏とたきうえ氏によるお笑いコンビ「流れ星☆」。彼らが2013年の漫才コンテスト「THE MANZAI」決勝で披露した「肘祭り」というネタが、神社創建の発端となっている。肘の神様を崇める架空の祭りを舞台にしたネタなのだが、後年本当に現実化させたのが肘神神社である。
今、伝統を創造している神社
肘祭りの実在を問われたことがきっかけ
あくまで漫才のネタである肘祭りと肘神様。しかしTHE MANZAIでの披露後、そんな架空の存在に対して、多くの問い合わせがあったという。これについてたきうえ氏は、岐阜の認知度と万物に神が宿る日本の信仰心があいまって誤解されたと考察している(瀧上伸一郎『肘神様が生まれた街』KADOKAWA、2018年)。
この盛り上がりを受けて、飛騨・美濃観光大使でもある彼らは、町おこしの意味を込めて、フィクションを現実化させることにした。
クラウドファンディングという現代的で古典的な手法
神社創建にあたっては、2017年にクラウドファンディングという手法が使われた。プラットフォームは現代的だが、手法としては、古来より地域住民の私財を募って建てられた神社が多いことを考えると古典的ともいえる。そして、目標金額150万円を大幅に超える、413万5,000円の支援が募り、実際に着手されることとなった。


肘祭りの開催
2018年、高山の本町三丁目商店街にあった空き地に肘神神社は建てられた。その後、同年8月1日、2日に商店街で開催された「高山本町納涼夜市」にて、実際に肘祭りも実施された。
地元に根付き、土着神として存在し続けるか
興味深いのは、ここからどのように、ある種の信仰が生まれ根付いていくかである。地元住民だけが知る小さな神社が、ある日突然ブームを巻き起こす流行神の現象は歴史上しばしばある。東京都の『太郎稲荷神社』はその最たる例だ。ある一族の屋敷神だった太郎稲荷神社にお参りしたことで、病気が治ったという噂が広まり、江戸時代多くの参拝客を呼んだ。
肘神神社も、何かしらの御利益(それこそ肘の怪我が治ったとか)が参拝者に訪れることで信仰を集め流行し、歴史を重ねることで土着神としての伝統を創っていくかもしれない。
終わりに
現代に伝統が生まれるプロセスを体験できるかもしれない貴重さ
2024年現在も、神社は綺麗に整えられており、また絵馬も多くの数が飾られているため、地元やファンの方達による支援が伺える。今は小規模な神社だが、述べたように何かのきっかけで本当の信仰を集めたとき、そこから神社の伝統は創られる。歴史の目撃者になれるかもしれない貴重な神社を、今のうちに訪れてみるのは如何だろうか。

主な参考資料
- 瀧上伸一郎“肘神様が生まれた街”,KADOKAWA,2018年.
- 飛騨経済新聞“高山で「肘祭り」開催迫る「肘神神社」御朱印に「肘」和菓子、地元商店も応援”,2018年7月31日.
- 公益財団法人東京都歴史文化財“不思議ないきもので疫病退散!「えどはくカルチャー 江戸の不安と信仰① 病を避ける図像」”,2020年11月6日
- 公益財団法人東京都歴史文化財“民衆が生み出した数多の神様 「えどはくカルチャー 江戸の不安と信仰②「流行神」の地をめぐる」”,2020年11月24日
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